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「ネバセイ」太田WS感想他 by パユ吉 [ 2018/10/31(Wed) 23:23:14 ]
 「ネバセイ」太田WSの感想文です。ダイヤリーへの貼り込みは困難ですが、BBSなら貼れるかも、と思い、『試しに』貼ってみます。

【注意】
 本内容はミュージカルの中身に踏み込むものがあります。先入観を得たくない方は、この先をお読みにならないでください。

---(以下、本文)---
2018.10.27.Sat.太田WS

 ネバセイは10年前、パユ吉がふとしたきっかけで読売新聞の群馬県版に掲載された記事を読んでしまったがために、アラムニー沼という恐ろしい底なし沼に首までどっぷりと漬かって、出られなくなってしまった作品です。あのとき新聞に目を通していなければ、沼とは無縁の幸せな人生を送っていたでしょう。

 9期公演で見ていますので、内容は完全に把握できています。が、初めて見る方にとっては、事前レクチャーなしでは「相当に難解な」内容だったと思います。世界史の知識や当時の政治情勢・地政学的な位置関係などを把握しておかなければなりません。たしか9期のパンフレットでも、この辺は細かめに注釈が書かれていたかと思います。19期のパンフレットでも同様の配慮が必要かと思われます。

 さて、通しで見せていただきましたが。
 1幕は完成度が高く、さほど手直しをしなくても、肉付けだけで本公演まで持っていけそうです。ただ、表情がまだ付いていない(この時期なら当たり前なので、気にする必要はありませんが)ので、役の感情解釈を丁寧にこなして行く必要がありそうです。
 2幕は・・・ 気を悪くされたらごめん。まだ本公演に出せる状態ではないです。セリフを通しで流して見た、くらいな感じです。とにかく難解な場面が続く(複雑な駆け引きやだまし、謀略が絡み合う)ところを、説明なしにいきなりその場面に突入させてしまっています。POUM/PSUCの関係やイデオロギーの違いが完全に抜け落ちていますし、対立の芽生えなしにいきなり決裂になってしまっています。ソ連の思惑や戦略・スペインでの影響力も見えてきません。舞台には出て来ませんが、ドイツや英仏の思惑なども絡ませたいところ(少しだけ説明しているけどね)です。あの人質奪還騒動に至っては、どういう経緯でそうなったのか、思い出そうとしても思い出せないほど。(リベラをいきなり「公開処刑」にすると言ったり、テープを渡したがベルタはそのままとらわれたままだし、そのベルタの救い出しとキャサリンの奪還がどのように行われたのかもよくわからん状態) 脚本に肉を付けずに、脚本通りに演じてしまったな、という感じです。2幕はたっぷりと説明や補助場面の追加をしないと、「中学生ではわからないのではないか」と思います。高校生でも世界史をまじめに履修(受験科目として選択するくらい)していないと、理解できないでしょう。2幕だけで+15分くらいの追加上演時間が必要ではないでしょうかね。(そのくらい丁寧に演じないと、この作品の良さが活きてこない)

【1幕】
■1場
 ココナツグルーヴのダンスは初めから切れがありました。アメリカ風の自由さを感じさせる動きでした。
 エレンは大人の雰囲気をよく出していたと思います。派手目なイメージを植え付けてあるので、後の5場の道化的な役柄がかえって光りますね。
 売れないキャサリンの少し暗めの落ち込んだ表情もいいです。成功者たちで固まっているハリウッドメンバーとの対比が出ていて、見栄えがします。「自分もいつか」とひとり気を吐くところも、ちゃんと伝わってきています。
 スペイン人たちが入ってきてからですが、ここで一気に人間関係が複雑になるので、観客が人物を把握しきれるよう、ゆっくり丁寧に紹介して欲しい。この人物関係を正しく押さえておかないと、あとの話しの展開についていけなくなってしまいます。
続き(2) by パユ吉 [ 2018/10/31(Wed) 23:24:54 ]
■2場
 ジョルジュとキャサリンの出会い。そしてお互いに惹かれ合って行く背景説明はすごく丁寧だった。似た境遇・思想を持つ2人ということが伝わってきています。おりこさんは少しだけ発声速度を落としたほうがいいかも。ジョルジュがものすごく落ち着いているので、キャサリンが逆に浮いた感じに聞こえてしまうの。
 「もう見つけた」 この間の取り方はいい。ほほえましく感じるこの一言に、さらに間の演技をさせてます。WSからこういう技巧が活かせるようになっているところに、役者の成長を感じさせますな。
 「手配はしてあります」 曽田さんの言葉だったと思うのですが、ここワンテンポ時間を開けて出して欲しい。スペインに渡航できないだろう、と皆が落ち込むところを、急転すくい上げるセリフです。周囲の落ち込む様子を入れてから、このセリフを発すると、場が活きてきます。間髪を入れずに出すと、皆、こうなることを期待していた、という意味になってしまいます。 アメリカからヨーロッパへの航空券。民間航空路線はあるにはありましたが、いまのように簡単に乗れるものでもありません。(小型のプロペラ機ですし。一般には客船でした。)
 「頼りがいのある人たち」のさあやの言葉もいいです。米西の団結が一気に強まった感じさえ与えてくれます。
 「野暮なことは・・・」でアトリエから引き上げようと促すマーク。粋な心遣いですな。ほほえましいです。
 ネバセイの歌:デュオはきれいでした。バックダンスが少し控え目だったでしょうか。キャサリンの歌がバックコーラスで入ってくるところは、ジョルジュの声を消さないよう、音量に注意が必要ですね。(To:音響さん)

■3場
 プレ開会式:ここは見応えがあった。場面がスペインに移り、スペインの熱さをこれでもか、と感じさせてくれる場でした。観客満足度は高いですぞ。
 PSUCのアギラールとリリアン登場ですが、この2人の強面・睨みは鋭い。終始この表情を崩さないところはいいです。が、この怖そうな2人も、2人だけの場面になると、リリアンに思いやりの表情が見え隠れするところが多々あり、2人の心情関係をうかがわせてくれます。ちょい悪の役であっても、人としての心をもっているところを垣間見せてくれています。(同じ事がコマロフ−タチアナの間にもありますな)
 ジョルジュとアギラールの再会。強面表情が緩むところは、ほっとする場でもあります。2人が学友であったとは。しかも、この2人の関係を2幕への伏線にも使っているところは、おもしろい筋書きだと感じました。
 ソ連共産党とPSUCの関係:さあわかりにくいところが登場。ここは説明が必要な場です。「見返り」とは? 世界史と国際情勢を履修していない中学生にどう説明する?
 内戦勃発:滞在国で紛争があった場合、在留邦人は国外に退避するのが普通の考え方ですが、このアメリカ人たちはスペインにとどまることを決意しています。その理由はなんだっただろうか。紛争地域ですから、死の危険がありますが、それを無視してもとどまるわけですから、よっぽど「強い」動機があったはず。この背景説明をいれて欲しい。流れで省いてしまってはダメ。

■4場
 モロッコ・セビリア・バルセロナ・マドリード、この位置関係。スペイン人なら把握できているとしても、アメリカ人全員が把握できているだろうか。日本人でもわからないので、アメリカ人でも同様、と推測するに。誰かが道化になって、場所の把握説明をしてもらう? ついでに言うと、後にちらっと登場するゲルニカの場所も。
 再会場所の提案:「闘牛場」 これに対してテレサの「闘牛場もなくなっているかも」の言葉は重い意味がありますね。闘牛はスペイン人の魂でもありますから、その開催場所も戦火でなくなっているかも、ということは、国内がどういう状態になっているか、ということを暗示しています。
 この場のラストに流れてる音は、たぶん砲撃の音だと思うのですが、この音源は見直しくだされ。遠くの砲声でいいのですが、戦闘地域が近づいていることを暗示させてくれる音が欲しいのです。気味の悪い音のほうがいいです。かすかに聞こえるでもいいです。危険が近いことを伝えてくれれば。
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